米FRBが量的緩和プログラムを継続すべき5つの理由

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ベン・バーナンキ氏

米下院金融委員会に出席している米国FRBのバーナンキ議長。(2013年7月17日撮影)

ロイター

 9月に米連邦準備理事会(FRB)が量的緩和プログラムの縮小を検討する可能性があるが、同プログラムを延長すべきだという考えもある。経済を専門とする編集者であるジョセフ・ラザロ(Joseph Lazzaro)氏の記事を紹介する。

 保守的なエコノミストたちは米連邦準備理事会(FRB)は量的緩和プログラムを縮小すべきだと考えているが、私は同プログラムを縮小すべきではないと考える。

 FRBが介入したおかげで、信用市場は循環し、銀行間の信頼は回復し、システム的に重要だといえる保険会社「アメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)」の経営も維持された。FRBの今介入は、世界大恐慌以来、最も成功を収めたといえる。FRBや世界各国の中央銀行の努力のおかげで、世界的な危機は回避された。確かに、100%完璧な介入ではなかったかもしれないが、概ね上手くいき、世界は物々交換時代へ戻ることから免れることができた。ATMは毎日、きちんと動いている。

 私が「FRBは量的緩和プログラムを縮小すべきはない」と考える5つの理由を下記に紹介する。

 1、雇用の回復が十分ではない

 ここ数か月、米国の雇用状況は改善したが、いまだに膨大な「仕事不足」である。過去4年間、雇用率は回復しつつあるが、統計上の失業者だけでも1,180万人いる。統計上は失業者ではないが働きたい人も含めれば、1,840万人分の雇用不足である。現在、1か月あたり19万人の新規雇用が創出されているが、1か月あたり25万人~30万人の新規雇用が提供されるようになるまで、量的緩和は削減すべきではない。

 2、公共投資に期待ができない

 米国は公共投資によって国内総生産(GDP)を成長させようとしていたが、共和党勢力によって歳出が削減された。今後、民間部門のGDPが成長したとしても、公共部門が足を引っ張ることになる。そのため、米国の経済回復のペースは緩やかとなるであろう。議会が仕事をしてくれない以上、FRBは刺激を長期間続ける必要がある。

 3、消費者が消費を控えている

 米国の消費者は慎重であり、消費行動を控える傾向にある。また、米国人口の高齢化も、個人消費が減少する一因となる。米国のGDPは個人消費がおよそ7割を占めてきたが、今後は、技術革新や輸出などの新分野によってGDP成長率を引き上げる必要がある。しかし、新分野の発展には時間がかかる。つまり、量的緩和を長期にわたって継続する必要がある。

 4、外需に期待ができない

 欧州は依然として債務危機に苦しみ、構造改革の必要がある。高齢化の進む日本はGDP成長率を2%にしようとやっきになっている。中国は、今のところ、米国市場の需要を十分に満たす存在ではない。欧州、日本、中国の経済的需要が、米国経済を刺激してくれることは期待できない。FRBは米国のGDP成長率をすべて内需で賄わなければならないのをわかっている。そのため、米国の量的緩和は、延長される必要がある。

 5、ハイパーインフレどころかデフレ懸念

 米国における個人消費の傾向を表すコアPCE指標は、過去12か月で1.05%の成長にとどまった。つまり、FRBの量的緩和は、懸念されていたようなハイパーインフレを引き起こさなかった。

 そして、米国経済の最大の敵はインフレではなく、デフレである。確かに、インフレはよくないかもしれないが、デフレは最悪である。デフレは、企業収益を悪化させ、デフレ・スパイラルを引き起こす。値下げの影響による減収は、リストラを引き起こし、その結果、消費行動は鈍化する。そして、さらなる値下げというわけである。

 安定した価格があってこそ、FRBは米国の雇用最大化を後押しすることができる。つまり、量的緩和政策は、2014年まで維持されるべきとなる。

 【結論】

 米国の雇用率の伸びは堅実であるが、まだ約1,200万人分の雇用が不足している。公共部門では、リストラを進めているにもかかわらず、歳出削減の影響を受けて、GDPを減少させている。欧州やアジアは大して米国経済回復の助けにはならない。ハイパーインフレは今のところ起こっていない。

 現在の経済状況を考えると、FRBは最短でも、2014年6月まで量的緩和プログラムを削減することを検討すべきではない。忍耐は美徳であり、雇用の最大化への鍵である。

 *この記事は、米国版 International Business Times の記事を日本向けに抄訳したものです。