米石油産業が「棚からぼたもち」、エジプト政情不安の影響

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スエズ運河

カイロの北(エジプト)の約120.7キロメートル北にあるスエズ運河。(6月13日撮影)

ロイター

 エジプトの政情不安の影響を受けて、米国オクラホマ州でも、原油価格は高騰している。4月中旬から7月初旬で、86米ドルから106米ドルへと23%も上昇した。

 アラブ世界、特にスエズ運河のあるエジプトの情勢が不安定になると、同運河経由での原油供給が中断されるかもしれないとの懸念から、原油価格は上昇する。現在、スエズ運河経由で1日あたり400万バレルが運送されている。

 ブルッキングス研究所(the Brookings Institution)エネルギー安全保障部門のディレクターを務めるチャールズ・エビンガー(Charles K. Ebinger)氏は、「米国の石油生産者は、政治不安から経済的利益を得ようとしています。エジプトに限った話ではなく、シリア、リビア、アルジェリアについてもそうでしょう」と述べた。

 米国の原油価格であるウエスト・テキサス・インターミディエート(West Texas Intermediate、略称:WTI)は、世界の3分の2の原油取引の指標となっている欧州のブレント原油価格の影響を大きく受ける。ブレント原油価格はスエズ運河に不安があると上昇し、それに連動する形で、WTI価格も上昇する。

 マサチューセッツ工科大学のエネルギーエコノミストであるクリストファー・ニッテル(Christopher R. Knittel)氏は「ブレント原油価格が高騰すれば、米国のWTIの価格も上昇します。それは、米国中西部やカナダの原油生産者にとっては有利といえます。それゆえ、WTI価格はさらに上昇するのです」と説明した。

 米国の原油価格が過去3か月間で上昇した理由は、ブレント原油価格だけではない。北米大陸では、シェールガスブームとカナダの原油産出のおかげで、より大量の原油を手に入れやすい状況が整った。その状況を活かすべく、米国中西部から湾岸部へ向けてパイプラインが拡大されたことにもよる。

 昨年6月に開通したパイプラインは、オクラホマ州のクッシングからテキサス州の精製所へ1日あたり15万バレルの原油を運送することを可能にした。今年1月に開通した第2段階によって、運送容量は1日あたり40万バレルへと増加した。さらに現在開通しているパイプラインに平行する形で、新しいパイプラインが建設中であり、来年の前半には開通する予定である。そうすれば、1日あたり45万バレルの運送が可能となる。

 最近まで、米国のパイプライン容量は、クッシングに備蓄できる原油量であった。しかし、新しいパイプラインが開通したことによって、余剰分を他の場所へ開放することが可能となったのだ。もちろん、高価格のメリットを享受することもできる。

 また、トランス・カナダ社(the TransCanada Corp.)も他のパイプラインを開通させたがっており、オバマ米大統領の承認を待っている。同社の代表者は「パイプラインの建設は8割がた終了しており、開通すれば、今年の終わりまでに1日あたり70万バレルをテキサス州の精製所に送ることが可能となる」と説明した。

 スタンフォード大学エネルギー・モデル・フォーラム(Energy Modeling Forum)の理事を務めるヒラード・ハンティントン(Hillard Huntington)氏は「湾岸部までパイプラインを伸ばせば、今までは販売できなかった市場へ販売することも可能となります。生産物の需要は増えるのです」と述べた。

 経済学の需要と供給の法則を考えるなら、米国からより多くの原油を供給することによって、原油価格は低下するはずだと考える人もいるかもしれない。

 その疑問に対して、マサチューセッツ工科大学のニッテル氏は、WTI価格は世界需要に反応するからだと説明する。米オクラホマ州クッシングから出荷される原油量は、世界価格に直接的な影響を与えるには少量過ぎるのである。同様の理由によって、WTI価格の上昇は、直接的にはガス価格の上昇につながらない。ガス価格は原油の世界価格の影響を受けるのである。

 ブルッキングス研究所のエビンガー氏は、「政治不安がある土地はエジプトだけではありません。シリアもまだ不安定ですし、世界有数の産油国であるサウジアラビアでも政治問題が発生する可能性はあります。原油供給事情は混乱する可能性があります」と述べた。

 同氏は、中東諸国の政情不安と米国の利益に明確な相関関係があるかと尋ねられて、「確実にあります。そして、それは、何も今に始まったことでありません。何らかの事情で原油高のとき、直接その原因の悪影響を受けない原油関係者は、いつだって利益を得ることがきるものなのです」と述べた。

 *この記事は、米国版 International Business Times の記事を日本向けに抄訳したものです。