IMF支援中のルーマニアで教会建設ラッシュ

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クルテア・デ・アルジェシュ修道院

ルーマニアでは非常なペースで教会の建設が進んでいる。

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東欧の国ルーマニアは、欧州連合(EU)諸国の中で最も貧しい国の1つだが、信仰をとても大切にしている。人口の86%が東方正教会信者というこの国では、非常な数の教会建設が費用を度外視して進められてきた。

BBCによれば、毎月建設される新しい教会は10に上るという。3日に1つというペースだ。この中には首都ブカレスト中心部で現在建設中の大聖堂も含まれる。完成すると125メートルという人民救済大聖堂(Cathedral for the People's Salvation)は、隣に位置する共産主義時代の独裁者ニコラエ・チャウシェスクの人民宮殿を越えて、南東欧で最も背の高い宗教建造物となる。教会の急増は、チャウシェスク体制崩壊からほぼ25年を経て、ルーマニアの政治・文化における正教会の存在が再び大きくなってきたことを反映している。

しかし、5人に1人が貧困線以下の生活を送り、4人に1人が失業中というこの国で、これほど多くの教会を公費から莫大な支出をして建設することに疑問を投げかける人もいる。ヴィクトル・ポンタ首相率いる社会民主党政府は、2009年の国際通貨基金(IMF)およびEUからの200億ユーロ(約2兆5000億円)の融資と引き換えに、4年にわたる意欲的な歳出削減、賃金・年金引き締めを行い、貧困は拡大している中、今年に入ってさらに新しい緊縮策を発表した。

しかし、ルーマニア政府は正教会への歳出を減らしてはいないようだ。報道によれば、聖職者の給与その他の経費ために、同国は毎年1億ユーロ以上を教会に支出しており、その中に現存する教会の修復や新しい教会の建設費用も含まれている。教会はさらに、地方や国営企業、教区民からも収入を得ている。緑の党党首であり国会議員のレムス・セルネア(Remus Cernea)氏はBBCに対し、次のように訴えた。「ルーマニアでは、国と教会との間に大きな問題があります。教会が何かを建設するのはよいのですが、それが国家や国民の金、公費で行われていなければの話だと思います」。

セルネア議員は、教会と政府高官との結びつきが強すぎるとし、「政治家が教会に公費を与え、見返りに選挙の時、聖職者が政治家を支援する場合が多いのです」と述べた。また「その政治家と密接な関係にある人物の会社が教会の建設に携わることも多いです。つまり、金が循環しているのです」と明かした。

さらに、ルーマニアでは人口増加率が減少しており、この点から見ても教会が増え続けることは理解しにくい。

しかし、ルーマニアの近現代史を紐解けば、教会建設へのこの熱狂ぶりも理解できるかもしれない。ルーマニア教会は、共産党との関係の中で苦しんできた。チャウシェスクの共産体制が多くの教会を損傷し破壊するかたわら、多くの聖職者は粛清を免れるため、国家と歩みをともにしてきた。1989年の共産体制崩壊以降、正教会は大きく復活してきたのだ。

ルーマニアのヴィクトル・オパスチ(Victor Opaschi)宗教相は、政府には教会を再興する義務があるのだと説明する。「共産主義者は教会から収奪し、ほぼすべての財産が喪失しました。政府は収奪された一部を補償しようとしているに過ぎません」と同相は言う。

ルーマニアで教会への執着が最も強いのは、北東部の町タルグ・オクナ(Târgu Ocna)だという。ルーマニアの通信社アクトメディアによれば、人口1万4,000人のこの町には27の宗教施設があるという。住民1,000人に1.9の教会がある計算だ。これに比べ、AP通信によれば、バイブル・ベルトと呼ばれる米国南部でも、住民1,000人当たりの教会数は1.5だ。タルグ・オクナの教会のほとんどは100年以上前のもので、聖パラシヴァ教会(St.Paraschiva Church)のように200年を優に超えるものもある。

「この町の宗教施設の多さは、3世紀以上にわたって文化的に非常な活気を見せたこの地で起こった歴史的事件や密度の高い公的生活を反映しているのです」と、ステファン・シロチ( Stefan Silochi )市長は、ルーマニア国営通信社AGERPRESに語った。

 *この記事は、米国版International Business Timesの記事を日本向けに抄訳したものです。