金の製造コスト上昇、今後も相場の下落は続くとアナリストが予測

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ガーナの金鉱労働者 

ガーナの金鉱労働者 

写真: ロイター通信


ガーナの金鉱労働者 写真: ロイター通信

 今年、金の価格が急落した。このため世界中の産金会社は収支が合わない。業界の98%の会社が生産コストを削減し、大きく低下した金の価格に耐えている。

 金のスポット価格が1オンス1,320ドル(9月30日時点)となる中で、米シティグループ社は顧客向けリポートを発表し「金相場の下落が続く」と予測した。

 シティグループのアナリストは「金企業は金相場下落の中でキャペックス(資本支出)、金探査費、企業コストを削減し続けて収支を合わせようとしてきた。それにもかかわらず、世界的な金の総費用はスポットレベルで損出が続いている」と述べた。

 「産金企業は、金相場下落に対応するために、今後6-12か月内にさらにコスト削減などの切り詰めを行うのではないか」と同アナリストは予測した。


世界の金の総費用。この中には現金によるコスト、キャペックス、金鉱探索費などが含まれている。図: 2013年9月シティグループリサーチによる

 毎年確実に価格が上昇していた頃は、新たな資本金プロジェクトや過去十年間に及ぶ金探索に、金企業は資金を投入していた。2011年4月に金の価格は過去最高に達した。しかし、これまでの戦略は現在では継続不可能であるとして、シティのアナリストは早急に業界の刷新を求めると述べた。

 「産金業者が資産を売却し、資本予算を大幅に削減し、金探索業務を狭めたとしても、これらの是正措置により彼らが近い将来必ず自由になり、問題解決に到るわけではない」とアナリストはリポートに記した。

 そして、コスト削減は「両刃の剣」であるとアナリストは述べた。

 金企業は生産低迷と戦うために「キャペックス(資本支出)」と呼ばれる資本コストをさらに調達する必要がある。キャペックスは不動産や設備の価値を、維持または向上させるための設備投資に関する資本的支出を指す。キャペックスを削減すると結果的に生産が落ち込む。つまり、1オンスの金を産出するコストを意味する「単位あたりのコスト」は上昇する。

 シティグループによるデータは、世界的な金のキャペックスが過去12年間で10倍上昇したにもかかわらず、単位あたりのコストは毎年16%上昇し、生産量は5%減少したことを示した。資本支出がさらに少なくなれば、単位あたりのコストは劇的に上昇するだろうと同リポートは指摘した。

 「キャペックスが削減されたかどうかにかかわらず、どちらにしても株主にとっては悪いシナリオだと思う。容易な状況ではない」とリポートは述べている。

 カナダの産金最大手であり世界一の金生産量を誇るバリックゴールド社(Barrick Gold)は、今年、コスト超過と金市場の低迷に対抗するためにいくつかの金鉱山を売却して、その資産構成をスリム化した。しかし、9月に開催された米産金業界の会議「デンバー・ゴールド・フォーラム」での投資家のプレゼンテーションで、バリック社は2013年の金1オンスあたりのコスト込みのいわゆる損益分岐点(all-in sustaining costs: AISC)を900 - 975ドル(約9万円 - 9万7,500円)で固定させると提示した。損益分岐点は管理会計上の概念の1つで売上高と費用の額がちょうど等しくなる売上高を指す。

 バリック社が提示したAISCは、シティが同社のAISCを金1オンスあたり約1,600ドル(約16万円)と見積もったのに比べると大幅に低い。これは、今年初夏、金市場の育成を目的とする組織「ワールド・ゴールド・カウンシル」が推進する基準に従って、予測外のコストにも対応しているためだ。

 業界幹部は、ワールド・ゴールド・カウンシルの新しい「オールイン(すべてを含む)」コスト基準で、多くの産金会社が、現在のスポット金価格での損益を示すことになると述べた。

 リポートを共同執筆したシティグループのアナリスト、ヨハン・ステイン(Johann Steyn)氏は「バリック社の低迷は、資本利子30億ドル(約3,000億円)と現金による税10億ドル(約1,000億円)によるものだ。同社のアナリストはこれを算入していなかった可能性がある」とIBTimesに電子メールで語った。バリック社にこれに関するコメントを求めたが、回答はない。同アナリストはバリック社のキャペックスは1オンスあたり810ドル(約8万1,000円)であるとした。

 金業界は、米国の不確実な金融政策のもとで重い減損損失や債務負担に直面している。シティグループは過去数か月の金鉱業部門で一貫して弱気となっている。

 *この記事は、米国版 International Business Times の記事を日本向けに抄訳したものです