米国:再開した国立公園はどこ? 政府機関閉鎖で地域経済に深刻な影響

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自由の女神

米フロリダ州タンパからやってきたベサニー・マニュウ(Bethany McNew)さん(24)は13日、ほぼ2週間ぶりに開通したニューヨーク港内のリバティー島へのツアーボートに乗って自由の女神を訪れた。そして自由の女神を模した格好で像の前でポーズをとった。

写真: ロイター通信

米フロリダ州タンパからやってきたベサニー・マニュウ(Bethany
米フロリダ州タンパからやってきたベサニー・マニュウ(Bethany McNew)さん(24)は13日、ほぼ2週間ぶりに開通したニューヨーク港内のリバティー島へのツアーボートに乗って自由の女神を訪れた。そして自由の女神を模した格好で像の前でポーズをとった。写真: ロイター通信

 米国立公園にとって厳しい年になっている。米議会で暫定予算が成立しないまま新会計年度に突入し、政府機関の一部閉鎖が始まったためだ。政府機関閉鎖は17年ぶりで、最大80万人の連邦職員が自宅待機となり、国立公園など一部の政府サービスが停止した。

 グランドキャニオンなどの国立公園は今月1日から閉鎖されているが、長期化するにつれて地域経済に深刻な影響が出ている。国立公園局が管轄する401か所の公園や保護地域、博物館には、例年この時期に多くの観光客が訪れるが、今年は締め出されているため、州政府は悲鳴を上げている。

 約2週間閉鎖された米国内の国立公園は、政治的対立によるこう着状態の中で大きな焦点となった。与野党の対立に妥協を求める叫びが挙がっている。米国人や海外からの訪問者は、自由と民主主義の基盤を持つ米国が、なぜ貴重な観光地を閉鎖するのかと尋ねている。米フィラデルフィア州の独立記念館やワシントンD.C.のナショナル・モール国立公園も閉鎖されて直接影響を受けているため、これまで以上に多くの議論が起こっている。

 議会が妥協に至り、国立公園が再開される目途は立っていない。しかし、わずかながらも好転の兆しがある。11日、サリー・ジュエル(Sally Jewell)米内務長官は、国立公園再開のための十分な資金提供に関して、公園当局との合意を模索していることを明らかにした。

 公開が中止されていた3つの観光名所で、地元の州が(期限付きで)運営費を肩代わりして13日に公開を再開した。ニューヨーク州の自由の女神像は地元州が公園管理局に36万9,300ドル(約3,700万円)を負担し、アリゾナ州はグランドキャニオン国立公園に65万1,000ドル(約6,500万円)を、サウスダコタ州はジョージ・ワシントンなどの巨大な頭像が山腹に刻まれているラシュモア山に15万2,000ドル(約1,500万円)を、それぞれ負担して観光サービスを再開した。

 国立公園局によると、2011年に約370万人が自由の女神像を訪れ、経済効果は2億ドル(約200億円)だった。これに対して人件費など1日当たりの像公開の運営経費は6万ドル(約600万円)に上るが、ニューヨーク州知事のアンドリュー・クオモ(Andrew Mark Cuomo)氏は「失う観光収入額とは比較にならない」と語り、負担への理解を求めた。

 自由の女神像とグランドキャニオンは(ともに10月のこの時期に1日約3万人の観光客が訪れるが)、それぞれ10月17日と18日までの運営資金を得て、双方とも12日に公開を再開した。一方ラシュモア山は10月23日までの運営資金を得て14日に再開した。また、コロラド州のロッキーマウンテン国立公園では10月20日までの運営資金36万2,700ドル(約3,600万円)を得て11日に再開した。

 ジュエル内務長官は、州政府の動きは「実際的かつ一時的な解決策であり、いくつかの団体や地域社会の痛みを軽減した」と語り「多くの人々が楽しめるように、一刻も早くすべての国立公園を再開したい。そのために、解決に向けて協調するよう議会に積極的に働きかけていく」と述べた。

 しかしジュエル長官は、返済に対する議会の承認を得られたとしても、国立公園再開のための支払義務を連邦政府に負わせることはできないことを明らかにした。ニューヨーク州では自由の女神を管理するためのスタッフを雇用するために観光予算が計上され、アリゾナ州では州の基金を活用し、サウスダコタ州では非営利団体や民間企業から寄付金を募っている。

 ユタ州は年間約1億ドル(約100億円)を観光産業から得ているが、毎年10月に、さらに魅力的な演出を施すために国立公園を一時閉鎖する。11日、全公園に167万ドル(約1億6,000万円)を投入してリニューアルオープンを行った。これは1日あたり16万6,572ドル(約1,600万円)をかけたことになる。アーチーズ国立公園、ブライスキャニオン国立公園、キャニオンランズ国立公園、キャピトルリーフ国立公園、シダーブレークス国定公園、グレンキャニオン国立保養地、ナチュラルブリッジズ国定公園、ザイオン国立公園は、いずれも少なくとも10月20日までは公開される。

 「私は、ユタ州の問題解決に向けてジュエル内務長官がオープンであることを称賛する。ユタ州がビジネスに適しており、ユタ州への訪問者は大歓迎されることをわかっていただけると思う」とゲーリー・ハーバート(Gary Herbert)ユタ州知事は語った。そして「ユタ州国立公園は、多くの農村地域経済の中心的支えであり、勤勉なユタ州人は今回の閉鎖に対して重い代償を払っていると」述べた。

 一般人による国立公園再開への活動もいくつか展開された。ワシントンD.C.の第二次世界大戦記念碑では、退役軍人らが障壁をわきへ押しのけて記念碑で活動を起こした。民主党は「このような行為は共和党のせいで発生した閉鎖による痛みを示している」と指摘した。一方、共和党は「オバマ大統領は公園を盾にとっており、オバマ政権が資金調達による支援を最初に拒絶したことに注目すべきだ」として非難した。

 2011年、米国立公園局は全米で2億7,900万件のレクリエーションを開催し、米国経済に301億ドル(約3兆円)以上の経済効果をもたらした。このうち130億ドル(約1兆3,000億円)は国立公園から約100キロ以内の地元のコミュニティに直接もたらされたと、2月に発表された業界の統計は伝えた。

 今回の政府機関の閉鎖により、ホテル業界も大きな損失を被った。米国ホテル宿泊所協会が米議会議員と大統領宛に送った手紙によると、今回の閉鎖により、ホテル業界では1日あたり約800万ドル(約8兆円)の損失が計上されているという。

 一方、米国旅行協会は、政府機関の閉鎖が原因で失われた旅行関連の経済収益は、1日当たり1億5,200万ドル(約150億円)と推定した。

 「政府機関の閉鎖は、これまで米国の景気回復の牽引力の1つであった観光部門を抑えこんでしまう」とロジャー・ダウ(Roger Dow)米国旅行産業協会会長兼最高経営責任者(CEO)は指摘して「政府機関が閉鎖されている状態下で、旅行業界で生計を立てている45万人の米国の労働者は、新たに1日1億5,200万ドルの損失と財政不安を抱えている」と述べた。

 ダウ氏は11日、大統領と議会に、米国の旅行業界が米国一のサービス輸出産業であり、2010年に米経済が回復し始めた後に、他の経済部門よりも迅速に雇用創出を追加してきたことを伝えて「政府機関の閉鎖が続くのは大きなダメージであり、深刻な結果を残す」と声明で述べた。また同氏は、継続中の政府機関閉鎖に対して、問題の早期解決を求めるとともに、旅行業界では約2兆ドル(約200兆円)の経済生産と1,460万人の業界関係者の雇用に深刻な影響が出ると述べた。

 13日夕方の時点で389の国立公園は閉鎖されたままだ。

 *この記事は、米国版 International Business Times の記事を日本向けに抄訳したものです。