イギリス:パブ文化が危機、減少の歯止めは見えず

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イギリスのパブ

ロンドンにあるパブ「プリンス・ジョージ」でビールを楽しむ客(2013年7月24日撮影)

ロイター

 伝統的なイギリスのパブ文化が危機に瀕している。過去6か月間、毎週26店舗のパブが閉店しているという。原因はパブの経営難である。

 イギリスでは、エールビールの人気が復活し、新たなクラフトビールも誕生している。エールビールの復活を目指す消費者団体であるCAMRA(the Campaign For Real Ale)のデータによれば、9月までの12か月間で新たに187の醸造所が同国内に誕生した。現在、イギリス内にある醸造所数の合計は1,147であり、ロンドンの醸造所数も2倍となった。

 しかし、その一方で、イギリスの伝統的な酒飲みたちの拠点であるパブが、経営難に陥っているのだ。

 財布の紐を締めたい消費者は、スーパーマーケットで安くビールを購入し、自宅で飲むことを好む。6年前からイギリスのバーとレストランでは喫煙が禁止になった影響もある。不動産価格の高さも、オーナーたちを泣かせている。

 しかし、根本的な原因は、ビールを飲む人口が減ったからではなく、パブのビジネスモデルである。パブのオーナーたちは、収益の大部分をパブを統括している経営会社(パブコ:pubco)に支払わなければならない。

 ビール網として知られているビジネスモデルである。テナントたちは、まず店舗を借りるための「家賃」を払う。そして、実は、もうひとつの「レンタル料」がある。テナントの元締めである企業(パブコ)に払うドリンク代である。そのドリンク代は、市場価格よりも大幅に高い。

 CAMRAのデータによれば、フォスタービールの小樽の卸売価格は84.99ポンド(約1万4,760円)であるが、パブコ価格では150.22ポンド(約2万6,090円)である。つまり、約77%の価格が上乗せされている。

 パブコは、500以上のパブを所有している。2012年の段階で、イギリスには5万のパブがあったといわれているが、そのうちの3分の1がパブコ・スタイルであった。中でも、パンチ・タヴァーン社(Punch Taverns PLC)は4,000店舗、エンタープライズ・インズ社(Enterprise Inns)社は9,000のテナント用のパブを所有している。

 キャメロン英首相による連立内閣は、この問題に取り組もうとしている。目標は、ライセンスを持って営業しているパブが、オープンな市場でビールを仕入れるパブよりも不利益をこうむってしまうことをなくすことである。

 消費者庁のジョー・スウィンソン(Jo Swinson)大臣は、政府は「パブコとテナントの不公平を是正すべく介入するつもりである」と述べた。しかし、具体的な方法は、まだ検討段階にある。

 パブ保護運動を展開する人々は、政府の決断が遅れれば、何千ものパブが危機にさらされると警鐘を鳴らす。

 超党派組織のパブ保護団体で代表を務めるイギリス自由民主党のグレッグ・ムルホランド(Greg Mulholland)氏は、政府はパブコにも市場価格に則ったやり方を義務付けるべきであると考える。

 同氏は、「現在、イギリスにおいて、質量ともにビール文化は拡大しています。醸造所は増えていますし、消費者たちはそれらを購入することができます。しかし、ビールを楽しむ場所が危機にさらされています。私たちは、地元のパブがきちんと公正な取引をすることができるように保証する必要があります」と述べた。

 また、パブコそのものが、不況にあえいでいるという問題もある。

 現在、パンチ社とエンタープライズ社は、不況前の1990年代から2000年代のパブブームのときに獲得した物件の取得費用の返済に苦しんでいる。そのため、時には、利益が出ているパブさえも、スーパーマーケットや豪華住宅などに改造するデベロッパーに販売しているのだ。

 CAMRAによれば、3月からの6か月間においては、毎週26店舗のパブが閉店している。その前の6か月間は毎週18店舗であった。2010年以降、220店舗あまりのパブはスーパーマーケットへと改装された。賭け屋となった場所も多い。

 ムルホランド氏は「私たちは、この国の文化的財産としてのパブを失いつつあるのと同時に、利益が出ているパブさえ失おうとしています。パブコは、債権者に負債を返済する資金を捻出するためにパブを売り払っています」と説明した。

 パンチ社は12月11日、債権者との交渉を進め、1月には支払い不履行を回避するための債務再編を本格化すると発表した。パンチ社のウェブサイトによると、2013年8月期の総負債額は、23億ポンド(約3,994.5億円)であった。

 エンタープライズ社は11月、428件のパブを売却した効果で、総負債が2億1,600万ポンド減り、25億ポンド(約4341.80億円)となる見込みだと発表した。

 *この記事は、米国版 International Business Times の記事を日本向けに抄訳したものです。