ニューヨークのマクドナルド、韓国人の高齢者が占拠

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マクドナルド

マクドナルド・レストラン。

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マクドナルド・レストラン。写真: ロイター

 米ニューヨーク市クイーンズ地区で発生した有名ファーストフード店マクドナルドの経営者と韓国系移民の高齢者たちの騒動は、巨大なメトロポリスで見過ごされてきた、いくつもの文化的亀裂を示している。

 ニューヨーク市クイーンズ北西部のアジア系住民が多く暮らすフラッシングのノーザラン通りとパーソンズ・ブルバード通りの交差点角にあるマクドナルドでは、高齢の韓国人たちが、コーヒーだけ、あるいはフライドポテトだけを注文して長時間座席を独占するため、(ハンバーガーや食事を購入した)他の客が店内で座れず、従業員を悩ませている。

 店のマネージャーが頻繁に警察や911(米国の緊急電話番号)に連絡して高齢者の韓国人を店から追い払おうとしたため、問題はさらに火花を散らすことになる。アジア文化を拠り所としている移民コミュニティの人々は、高齢者を尊重し高く評価するべきだと怒りをあらわにしている。

 地元政治家、ニューヨーク州下院議員(民主党)のロン・キム(Ron Kim)さんは、フラッシング地域を代表して最近1つの妥協案を出した。彼自身が韓国系米国人であり、高齢者とマクドナルドの間の「休戦」を仲介し、店の経営者ジャック・バート(Jack Bert)さんと12人の韓国人高齢者は妥協に至った。韓国人は午前11時から午後3時までの「混雑する時間帯」以外の時間は、店舗内の座席確保を享受しても良いことになった。地元高齢者センターがマクドナルドへの行き帰りの交通手段を提供する(最も近い韓国人高齢者は20ブロック先に住んでいると同センターは報じた)。また、バートさんと従業員は、今後、韓国人の長時間の滞在などの騒動を解決するために警察には電話しないことになった。「生活のためにビジネスを展開している中小企業経営者の窮状と、居場所が必要な高齢者たちを理解する」とキム議員は語り、地元新聞のクイーンズ・クロニクル紙に両サイドのバランスをとるように努めたいとの声明を発表した。

 キム議員は、議会に選出された初の韓国系米国人だが、事態の紛糾について人種差別や差別待遇ではなく、むしろ「文化的誤解」であると位置づけている。「フラッシングで20年前からビジネスを行ってきた企業経営者は、ビジネスの継続を図りながら、一方で地元の先輩たちを受け入れてきた」と彼は語った。

 文化的考察はさておき、地元の韓国人の中には些細な口論が移民社会の高齢者に対する深刻な問題を提示していると言う者もいる。韓国コミュニティサービス(KCS)は主に高齢者を支援する組織だが、リンダ・リー(Linda Lee)事務局長は「この問題に注目が集まっているが、問題の根本にあるのは、韓国人先輩のための社会サービスや利用可能なリソースの不足であると考えている。高齢者が行って仲間と時間を過ごす独立性と所有感を得られる多くの場所を作成する必要がある」とクロニクル紙に語った。

 サニー・ハーン(Sunny Hahn)さんはフラッシングを拠点にクイーンズの韓国系アメリカ人協会で活動しているが「この問題はマクドナルドでコーヒーを飲む高齢の男性や女性のグループをはるかに超えたものだ。彼らのために十分な施設が存在しないというのは悲しい。韓国系のパン屋さんでもこの状況に対応できていない」と彼女はクロニクル紙に語った。

 米ニューヨーク・タイムズ紙は、高齢者の韓国人は、歩行器、杖、あるいは車椅子の補助が必要な人も多いが、時には丸一日をマクドナルドで過ごし、(お客様は1食につき20分以上の時間をかけないでくださいと壁に掲示しているにもかかわらず)1杯のコーヒーで長時間を過ごしていると報じた。韓国人の中には午前5時頃には来店し、暗くなるまで店に滞在する者もいる。しかし強制退去で彼らを遠ざけることはできない。マン・ヒョン・リー(Man Hyung Lee)さん(77歳)は先月、警察官によってマクドナルドの外へ引っ張り出された。「彼らは私に出て行くように命じた。だから出て行った。1ブロック周辺を歩いて、すぐに店に戻った」と彼は語った。

 レストラン従業員は高齢の韓国人が席を独占し、料金を支払っている他の顧客が座れないために失望すれば、ビジネスにダメージになると主張している。「ここはマクドナルドだ。高齢者センターではない」とマーサ・アンダーソン(Martha Anderson)ゼネラルマネージャーはタイムズ紙に訴えた。グローバル企業であるマクドナルド社は、このような微妙な問題を認識していた。「これは本当に難しい問題だ」とマクドナルドの広報担当者、リサ・マコーム(Lisa McComb)氏はタイムズ紙に語った。「店では、長い間、これらのお客様を歓迎してきた。しかし、高齢者の韓国人が店内で長時間滞在することは、マクドナルド従業員との軋轢につながっている」と語った。

 キム議員が仲介する前に、クイーンズの一部の韓国人は年長者への対応に抗議して、同地区のマクドナルドのボイコットを呼びかけていた。「高齢者を犯罪者として扱うべきではない」とニューヨークの韓国人父母の会(Korean Parents Association of New York)のクリスティン・コリガン(Christine Colligan)さんは、フラッシング地区の飲食店外で抗議活動中に述べた。「高齢者は尊重されるべきである」としてコリガンさんは「人種差別」のマクドナルドを非難し、2月にマクドナルドの世界的なボイコットを呼びかけた。「あなたなら祖母に対して警察を呼ぶだろうか」とコリガンさんはタイムズに語った。「韓国人の高齢者や親世代を犯罪者のように取り扱うのなら、それは韓国人全体に対する侮辱である。韓国人の高齢者は戦争の余波を克服し、世界のトップ10の1つにまで国の経済力を高めてきた。彼らは尊敬に値する」と同団体は声明で主張している。

 韓国系米国人の活動家テレンス・パーク(Terence Park)さんは、マクドナルドの韓国人高齢者を「犯罪者」のように扱うべきではないと不満を語った。「彼らはおじいちゃんや、おばあちゃんである。もっと理解する必要がある」とパークさんはクロニクルに語った。「多くのお金も持っていないが、集まる場所を必要としている」とパークさんは付け加えた。暖かい夏の間、韓国人たちは公園に集まることを好むが、冬には公園にはいられず、集まるための快適な場所がない。「かつて、父はマクドナルドでぶらぶらしていた。そこは父の日常生活の一部だった」とパークさんは言った。地元法務局の警察官で、彼女自身は韓国系米国人のヒジン・パークダンス(Hee-Jin Park-Dance)さんは、警察や周囲の人がフラッシングの多様なコミュニティでの社会文化の変化を理解する必要があると認めた。「韓国などのアジア文化では、年長者が尊敬される。年長者を見かければ立ち上がって、すぐに席を代わる。それは尊敬の念を表わしている。コミュニティを知る必要がある」と彼女はタイムズ紙に語った。

 ニューヨークの韓国・米国ビジネス協議会ヨンジン・キム(Young Jin Kim)会長は、「年長者の尊重は深長かつ重要である」として、財務事項に優先することを示唆した。

 ただし、すべての韓国人が(ニューヨークでもソウルでも)ファーストフードのレストランに長時間滞在する高齢の同胞に共感しているわけではない。韓国の英字紙コリア・タイムズは、フラッシングの若い韓国人の中には、多くを購入することなく韓国人高齢者がマクドナルドで長い時間を過ごすのはシステムを悪用していると思っていると述べた。「マクドナルド店は有名であるが、評判は悪いと言うべきかもしれない」とフラッシングのキム・ジスン(Kim Ji-sun)さん(27歳)はコリア・タイムズ紙に語った。「店内に入ると一目で、一群の高齢の韓国人たちが店内のかなりの広さを占有しているのがわかる」と述べた。また、別の若い韓国人のスル・ジハエ(Sul Ji-hae)さんは「私は混雑を避けるためにランチタイムの30分前に店に行く。カウンターの前に行列はないが、空席はない。いつも大半を占めているのは韓国人の高齢者だ」とコリア・タイムズに嘆いた。

 韓国のオンライン・ソーシャルメディア利用者は前述したマクドナルドのボイコットの提案を批判した。「韓国の高齢者は2~3人で1ドル(約100円)のコーヒーをシェアして再度補充する。時にはカップを家に持ち帰り、それを洗い、再び持ってきてそれに補充する。韓国人として見ていて恥ずかしい」と述べた。

 また、コリア・タイムズは、多くのアジア系移民が集まるフラッシングが、コーヒーを飲んでぶらぶらする韓国人にとってコミュニティセンターや高齢者センターに代わる存在になっており、マクドナルドは安価で便利で日常生活の一部として確立された場となっているため、好んで利用されていると指摘した。「これらの人々に他に行く場所がないというわけではない。彼らはただマクドナルドに行くのが気に入っている。それはみんなが集まる場所だからだ。日付や時刻を指定する必要はない」とファーストフード店の向かいでケーキ屋を経営するソ・ジウ(Seo-Ji-woo)さんは述べた。いつ行っても、何時に行っても、おしゃべりできるシニアの友達を見つけることができる。そこは切り離すことができない大切な待ち合わせ場所である。

 アジア系米国人連盟(AAP)によると、ニューヨーク市には米国内で最多の韓国系米国人が暮らし、市内で3番目に大きいアジア系民族集団を形成しているという。ニューヨーク市の韓国人数は2008年から2011年にかけて11%増の10万3,000人以上となった。このうちの3分の2の韓国人はニューヨーク市内クイーンズ地区に暮らす。また、AAPのデータは、韓国人は他のニューヨークの住民に比べると、より高い教育レベルと低い児童貧困率を維持している一方で、シニアの貧困率は25.5%と高い割合であることを示している。市内の韓国人の高齢者は英語力が低いことでも苦労している。フラッシングのマクドナルドをひいきにしている多くの韓国人は、孤独な貧困層かもしれない。

 *この記事は、米国版 International Business Times の記事を日本向けに抄訳したものです。