ウクライナ・ロシア危機:穀物価格への影響は

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ウクライナ南部ニコラエフ近郊でトラックに穀物を積み込むコンバイン

世界有数の穀物生産地であるウクライナ・ロシアの情勢は、穀物価格にどのように影響を与えるのか

ロイター

ロシア・ウクライナ間の危機は長引いているが、両国の穀物セクターは大きな混乱なくしのげそうだ。

両国は小麦、トウモロコシの大きな生産地だ。ウクライナ情勢が黒海の輸送に混乱を招き、小麦やトウモロコシの収穫量も大幅に減少するだろうと世界中のウォッチャーが予測していた。このため3月初め、両国の小麦、トウモロコシの価格は高騰した。

しかし、ウクライナ・ロシア両国の2014年の農業生産高や輸送能力への懸念が下火になり、この数週間では主要コモディティ価格は落ち着いた。

「ロシアとウクライナの小麦の現金取引価格は、この2週間でトン当たり10ドルも上昇しました。しかし先週は3ドルから4ドルに落ち着きました。トウモロコシはそもそもあまり上がらず3ドルから5ドル程度で、先週には当初のレベルに戻りました」とLinn Groupのロイ・ハカビー(Roy Huckabay)副社長はEメールで解説を寄せた。

ウクライナは昨年、トウモロコシ輸出では世界第4位、小麦では6位で、世界の市場への影響力は大きい。ロシアもトウモロコシで7位、小麦で5位だ。世界の食料供給に大きな役割を果たす両国だからこそ、昨年2月・3月のロシアがクリミアに部隊を派遣したというニュースは、市場関係者や投資家に気をもませることになった。

「第一報が報じられたとき、米国の輸出が伸びることになるだろうと市場は本当に予測しました。混乱と制裁の結果、米国から欧州への輸出が伸びるだろうと読んだのです。特別なことが起きたわけではなく、ロシア・ウクライナ両国が小麦を輸出できなくなり、米国がその一部を肩代わりすることになろうというのが大方の見方でした」と電話取材に応じたのはMidwest Market Solutionsのブライアン・フープス(Brian Hoops)社長兼シニアアナリストだ。

しかし、最近では危機感は薄れ、それはこの2週間の小麦価格の下落や、3月初旬に高騰した後のトウモロコシ市場の安定に表れている。

こうした主要農作物市場における信頼感は、トウモロコシや小麦がいま比較的高値で取引されており、今年、ロシアやウクライナでほぼ平年並みの収量を生産するインセンティブは十分だという読みに基づいている。

「黒海の輸送は混乱していませんし、これはプラスです。そして、それが第一の懸念でした。第二の懸念は、輸送が出来るなら、生産はどうか?という点でした。大勢の見方は、穀物価格が現在の水準なら――かなり高いがひと頃よりは下がった――、まだ生産は続くだろうというものです。多くの人は、不確実でもそこにある利益のために作物を生産しようとします。事態は多少落ち着いたと私は考えています。だから、緊張が緩和されるにつれ、生産者の懸念も和らいでいると思うのです」と電話取材で述べたのは、U.S. Commodities社のドン・ルース社長だ。

旧ソ連諸国の穀物市場が危機を乗り切れるかどうかについては、疑問なしとしないウォッチャーもいる。ソ連・ロシアで育ち、この地域を専門とするTippie College of Businessのアート・ドゥルネフ(Art Durnev)教授(財政学)は、事態はまだ流動的と見る。「予想は難しいです。なお多くの不確定要素があり、それが続くとすれば、現地の農業市場が影響を受ける可能性は大いにあります。地域に安定が訪れるまで、価格は上がり続けるでしょう。目下のところ、情勢は日々変わっていっています」と電話取材に答えた。

しかし大方の専門家は、ロシアが2月27、28日にクリミアの主要都市シンフェロポリの主要な建物を掌握した後、穀物市場予想は緊張の度を弱めており、農業生産者の2014年の生産の準備が整うにつれ、市場は沈静化したとみている。「まだ多少の懸念はありますが、この数週間、速報されるようなニュースはありませんし、価格に大きな影響を与えるような要素は除かれたと言ってよいでしょう。この地域に新たな政治不安が起こるかどうか注視したいと思います」とフープス氏は言う。

ルース氏によれば、政治危機に代わって、天候の概況がウクライナの穀物市場の主要な関心事になっているという。「まだ完全ではありませんが、ロシア・ウクライナの混乱は一定のレベルまで落ち着いたと考えています。本当に注視しているのは、この地域の一部の天候です。ウクライナでは乾燥傾向が続いているのです。」

*この記事は、米国版International Business Timesの記事を日本向けに抄訳したものです。