新入社員の傾向と育成する際の落とし穴

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 この4月に6社において新入社員研修に携わらせて頂きました。

 4月半ば、ある企業様で研修を担当させて頂いた時のことです。この会社では、既にマナー研修や社会人としての意識付けの研修を実施されており、朝、私が教室に入室すると、受講者から次々と「おはようございます」と挨拶をされました。

 しっかりと挨拶が出来ていることを嬉しく思いながら、研修が始まるまで、教室でしばらく様子を見ていて、あることに気づきました。

 教室の前から入ってくる人には挨拶をしていますが、教室の後ろから入ってくる人には挨拶をしていないのです。また、人事の人や外部の人には挨拶をしていますが、受講者同士の挨拶は、まばらな状態でした。

 研修が始まり、号令に合わせた挨拶がありました。きちんとお辞儀は出来ているのですが、声は小さく、気持ちのこもった挨拶とは言えませんでした。

 グループワークをして、グループで纏めたことに対して発表を促すと、ほぼ全員が手を挙げました。しかしながら、「何か質問はありますか?」と問いかけても、誰一人として手を挙げない状況が続きました。

 これは、ある会社での一例ですが、他社でも同じような傾向が見られました。このエピソードに、新入社員の傾向と育成する際の落とし穴があると思います。

 この会社の新入社員は、なぜこのような行動になったのでしょうか?

 新入社員の立場からすると、これまでの研修で教えられたことを、一生懸命に実践しようとしている状態には違いありません。挨拶もしていますし、手も挙げています。

 でも、それは『主体的ではない積極性』だと感じました。「言われたから行動している」状態に過ぎません。

 一つ一つの行動をする目的を理解して行動している訳でもなく、自らの「行動しよう」という意志に基づいて行動している訳でもなく、行動する際に出てくる不安や恐れを乗り越えて行動している訳でもありません。

 教えられた「型」を、教えられたままに行動しているだけなのです。

 だからこそ、教室の前から入ってくる人には挨拶が出来ても、教室の後ろから入ってくる人には挨拶が出来ないという状況が起きてしまうのです。

 このままでは、「廊下ですれ違った人にも挨拶は必要ですよ」「上司だけではなく、同僚にも挨拶が必要ですよ」「朝だけではなく、帰るときも挨拶が必要ですよ」といったように、全ての状況において教える必要があり、結果的に、教えられたことは出来ても、教えられていないことは出来ない社員になってしまいます。

 この会社に限らず、人事担当者からは、今年の新入社員に対して、「言われた時は実践するのだけれども継続しない」「失敗を恐れて一歩を踏み出すことが出来ない」「一生懸命に学んでいるのだけれど、貪欲さや覇気に欠ける」といった課題が聞かれました。

 私が新入社員研修を担当させて頂いた企業様でもこのような傾向が見られましたが、実際には、このような傾向があることを踏まえずに育成をしてしまっていることが“落とし穴”になってしまっているのです。

 その落とし穴とは、

・マナーなどの型だけを教えるにとどまっていること

・積極的に行動することを強制してしまっていること

です。

 ある商社では、「強い個」になることをテーマに、変化の時代を生きてきた自分たちだからこそ発揮できる価値をじっくりと考えて頂きました。

 また、価値を出すことは分かっているものの、どのような心理的なブレーキが価値を出そうとする自分を妨げているのかもじっくりと考えて頂きました。失敗を恐れる気持ちや、他者からの評価が気になって一歩を踏み出せない状態にいることも明らかになってきました。

 実際に、新入社員において「言われたことしか出来ない」といった課題はあると思います。

 だからこそ、そのような傾向を踏まえて育成することが大切です。単に、「型を教えるだけ」でも、「主体性を強制」しても、一過性の行動変容にしかならず、職場で応用が効きません。

 このような状況における3つの育成ポイントをお伝えします。

 一つ目は、一歩を踏み出すことを妨げている心理的ブレーキをしっかりと自覚させることです。「失敗を恐れるな」と言うだけでは不十分です。失敗することは怖いことであり、人に迷惑がかかることです。失敗を恐れる気持ちは、人として当たり前の心理状態です。

 大切なことは、失敗を恐れて、行動をしない自分(自己保身で利己的な自分)をじっくりと見つめ、その自分を自覚することです。恐れをなくそうとせず、恐れる自分を自覚するだけで、人は一歩を踏み出せるようになるのです。

 二つ目は、常に価値発揮の意識を持つことです。グループワークにしても、「自分の意見を言う」という価値発揮をする人もいれば、「時間内にアウトプットを出すために働きかける」価値発揮の仕方もあります。「発表の準備」を促す人もいれば、「時間管理」をする人もいます。

 クラス全体に対する価値発揮も同様で、価値を発揮していない社会人は、人の役に立てずに、周囲から必要とされなくなっていく現実をしっかりと理解したうえで、今、この瞬間にどのような価値発揮を意識しているかをじっくりと考えさせることです。

 三つ目は、何のために価値発揮をするのかをしっかりと考える癖をつけることです。目的やゴールを捉えることを常に意識することです。特に、相手が期待する水準が何なのかを常に意識した上で、目的やゴールを考えることです。

 研修中であれば、人事が何を期待しているのか。なぜ、この研修をしているのか。なぜ、このメッセージを発信しているのか。そのような言葉から、相手の期待を捉え、自ら目的やゴールを設定する訓練をすることです。このようなことを意識していると、人事に言われる前に、「机を元に戻した方がいいでしょうか」「ホワイトボードを消しましょうか」といった働きかけも、自ら起こせるようになってきます。「言われたから」ではなく、自らの意志で行動するようになるのです。

 今年の新入社員は、日本生産性本部調査によると「自動ブレーキ型」だと言われます。リスクに敏感で安全思考かもしれません。ただ、同時に高性能で、変化の時代の象徴と言えると思います。

 アメリカでは、この世代をミレニアル世代と呼び、物心がついたときから電子機器に触れ、ITに対して抵抗がない世代として注目されています。これからの変化を先取りして、変化を生み出していくことが出来る大きな可能性を秘めているのです。

 変化を先取りし、変化を創りだしていける人に成長することに期待をかけ、自らの意志をもって行動していく人材を育成していくことが何より重要だと私は考えます。

株式会社シェイク