不確実な変化の時代における人材育成のあり方

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 5月3日~7日にかけて、米国ワシントンで開催された人材育成に関するカンファレンス、ASTD2014国際会議に参加してきました。ASTDの今年のテーマは、「Change」。人材育成部門自体が変わることの必要があるとのメッセージが強調されました。

 「VUCA(ブーカ)(V:Volatility(変動性)、U:Uncertainty(不確実性)、C:Complexity(複雑性)、A:Ambiguity(曖昧性)」というキーワードが繰り返し使われ、不確実な変化の時代における人材育成のあり方が問われ続けました。

 象徴的だったのは、ASTDという団体名自体が、カンファレンス開催途中にASTD (American Society for Training & Development)から、ATD(the Association for Talent Development)変更になったことです。

 3日目が終わり、4日目に会場に行くと会場のレイアウト自体が一夜にして全て変更され、カンファレンスそのものも大きく変化しました。

 私自身、ATD(新名称で記載します)に参加したのは初めてでしたが、今回参加しただけでも、次のような人材育成の変化の潮流を感じました。

 ・Training だけではなく Development 強化へ

(クラスルームでの研修から、日常の成長の支援重視への傾向が強まる)

・ROIによる数値の可視化だけではなく、ニューロサイエンスによる脳の働きや変化の可視化へ

(人材育成の効果を脳科学的に解明する傾向が強まる)

・Changeだけではなく、Transformationへ

(行動変化を強制するのではなく、認知変化を前提とする傾向が強まる)

 私自身、この変化の時代において、これから日本企業が益々強くなり、働く人がイキイキと働くための鍵は「リーダーシップ開発」であると信じています。

 しかしながら、日本ではまだまだ、「リーダーシップ開発」が一部のリーダーに限られる能力開発だと捉えられていたり、特殊な能力を開発することのように捉えられていることが多いと感じており、どうすれば「リーダーシップ開発」をより日本に広げていくことが出来るのかを見極めることを目的に、ATDに参加しました。

 リーダーシップをテーマにするセッションだけでも、30を超すセッションがあり、様々な取り組み事例や効果の測定事例などが紹介されていました。

 今回は、私がATDに参加し、改めてリーダーシップに関して考えたことを整理したいと思います。

 まずは、ATDで発表されていた2つの事例をご紹介します。

 一つ目は、NASAのゴダード宇宙飛行センターによるリーダーシップ開発の事例です。

 リーダーシップ開発の前提として語られていたのは、

・すべての人がリーダーであり、リーダーシップはすべての人が取り組むことである

・リーダーシップに立場は関係ない。全ての人が影響を与えあっている

・いつ、いかなる状況においても、リーダーシップを発揮する機会がある

といったことです。

 リーダーシップを発揮する対象を、

1.自分自身 2.自分と相手 3.グループ 4.組織 5.環境

と整理しつつ、個人のリーダーシップのレベルに見合ったプログラムを用意して、リーダーシップ開発をトレーニングとリアルでの実践を数カ月にわたって繰り返す

プログラムが確立されています。

 二つ目は、ゴア社の事例です。ゴア社はゲイリー・ハメル氏の『経営の未来』でも先進的企業として紹介されている企業で、世界中に一万人以上の従業員を擁しているにも拘わらず、創業以来50年以上にわたり、1人のマネージャーも存在しない組織形態となっていることで有名です。

 イノベーションが起き続ける組織として、また、働きやすい組織としても有名で、そのような組織になっている背景やポイントなどが紹介されました。

 ゴア社では、“人をマネジメントするのはその人以外の誰かではなく、その人自身である”という基本的なフィロソフィーがベースになっています。社員に対して、「自分自身がリーダーシップを発揮していると思うか?」と質問すると、50%以上が「YES」と答える組織となっており、一人ひとりがどこに向かいたいのかという情熱と、個人の間の関係性を重要視することで、一万人以上の組織においても自律的な組織運営が可能になっているのです。

 他にも、リーダーシップに関する様々な事例や考察や、実証データなどがありましたが、共通するのは、誰か一人の特別なリーダーが組織を変えるのではなく、

一人ひとりが組織を変える主体者としてリーダーシップを発揮することが求められているということです。

 今回、ASTDからATD(the Association for Talent Development)に名称が変わりましたが、この団体の目的は、Talent Developmentです。

 まず、この変化の時代において、自分自身が変化の起点となる個人の才能を開発することが、変化に対応する組織の前提となります。

 私自身、人材育成を突き詰めると、人材育成の最も根源にあるのは、“強い個”の育成だと思います。一人ひとりの持っている才能を最大化し、可能性を解き放つことです。

 “強い個”を育成するとは、自分自身を深く理解しており(自分は何者か)、どこに向かっているのか(自分は何を成し遂げたいのか)が明確になっている状態です。

 やらされ感で仕事をしていたり、不満や文句に苛まれていたり、受身的な状態ではなく、自分の意志に沿って活動し、自分が変革の起点となり、周囲に影響を与えている状態です。

 自分自身のぶれない想いがあり、まっすぐに未来を見据えて行動している人に人は付いて行きます。一人ひとりがそのような人となり、相互信頼のもとに組織が構成されれば、どんなに強い組織になるでしょうか?

 このような組織になる起点は、間違いなく、個人です。

 リーダーシップとは、個人が「自らの志に沿って生きること」に他なりません。

 志とは、よりよい未来を創造するための想いと言い換えてもいいと思います。

 そのような想いは誰もが持っているもので、一人ひとりがその想いに沿って生きるとき、個人、組織、そして日本、世界も変わっていくのだと思います。

株式会社シェイク