スイス・ロマンド管弦楽団、日本公演前にキラキラ感を全開

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 スイス・ロマンド管弦楽団の演奏会がスイス・ジュネーブで6月29日、日本ツアーに出発する直前に開催された。演奏後に、「このオケの良さである明るく華やかなキラキラ感が最高に発揮された」と指揮者の山田和樹さんは話した。15年ぶりの日本公演に興奮気味の楽屋裏を訪ねた。

 今日は素晴らしかった。特にニコライ・リムスキー・コルサコフの曲、『シェヘラザード』は、このオケの指揮者エルネスト・アンセルメがスイス・ロマンドの第1回の演奏に使った曲。だから団員は皆この曲の音を知っている。最高の音を出してくれた」と山田さんは喜びにあふれ、団員に次々とシャンペングラスを手渡した。昨年の10月以来、このオケと会っていないので少し不安だったが、その心配が吹き飛んだとも話した。

 この「シェヘラザード」は日本で演奏される曲目の一つ。そのために今回選ばれたのだが、アーティスティック・ディレクターはこれを選ぶことで、団員たちにこのオケ独自のルーツ、音、良さを再確認し、自信をつけてもらおうとしたのかも知れない。

 このオケの良さとは、山田さんによれば「あるきっかけでのるとそれぞれが最高の音を出してくれること。しかもキラキラ感あふれる音だ」。「シェへラザード」は千夜一夜物語から着想を得た曲で、ロマンチックで楽しいメロディーの後に、はるか彼方から響いてくる物悲しい民謡のようなライトモチーフを、バイオリンやチェロ、クラリネットなどがソロ演奏で繋いでいく不思議な構造の曲。このソロのパートを各奏者は、この日、自信にあふれ最高の音になるよう楽器を鳴らせた。

 そのうちの一人の第一バイオリン。彼はこの物悲しいライトモチーフをうねるように高みに引き上げ、最後は澄んだ高音を細くかすかに奏でる。この奏者は前回スイスインフォのインタビューで「カズキは僕を知らないうちに高いところに連れて行ってくれる。恍惚の、至福の状態に持って行ってくれる」と形容した人だった。

 ソリスト、樫本大進

アーティスティック・ディレクターは、日本で演奏されるチャイコフスキーの「バイオリン協奏曲ニ長調」も今回の演奏に選んでいる。これは、ベルリン・フィルの第1コンサートマスター、樫本大進さんがバイオリンのソリストを務め、音楽性溢れる力強い音で周囲を圧倒した。

 演奏後に樫本さんは「それぞれの個性あるオケとの出会いは面白く、その個性とうまくやっていくのがチャレンジになる」と前置きしたうえで、「このスイス・ロマンドは、きれいで楽しさ溢れるものを出せる。(バイオリン協奏曲では)僕のソロとぴたりと合った」とコメントした。

 輝くような喜びを奏でる楽器

あるバイオリンの女性奏者に日本ツアーのことを聞くと、「すっかり準備はできている。とても楽しみにしている」との返事。さらに山田さんを「彼は信じられないくらい威圧感がなく自然な指揮者。団員のそれぞれの個性を大事にし自由を与えてくれながら、同時にこうしたらいいのではと提案もしてくれる。私は彼が大好き。みんな大満足」とほほ笑んだ。ちなみに、こうした団員の満足感を反映して、山田さんの首席客演指揮者としての2015年までの契約が、1週間前に2017年まで延長されている。

 チェロのドイツ人の奏者も「ドイツのオケに比べると、ここは人間性溢れ楽しい演奏ができるところ。オケは、それ自身を一つの楽器にたとえられるが、山田はこの楽器を輝く喜びを出すように弾くことができる」と絶賛した。

 山田さん本人はこうした絶賛に照れながら、「日本ツアーは(成功させないといけないので)緊張している。このオケが輝くような喜びの音を出してくれることは間違いないが、ちょっとした緻密な部分でのミスなどをどうカバーするかが課題。日本のお客さんは耳が肥えていて、こうした点に厳しいので」と話し、「結局、それは各リハーサルで調整していくしかない」と括る。キラキラ感あふれる演奏は、7月4日に福井の「ハーモニーホールふくい」からスタートする。

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