がんの原因に「手洗い」 抗菌せっけんの驚くべき作用

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手洗い

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Flickr/arlingtonva

 手洗いは、世界の衛生問題の多くを解決してきた。しかし、この一般的な衛生習慣には「ダークサイド」があるかもしれない。17日発表の米国科学アカデミー紀要によると、抗菌ハンドソープに使われている化学物質で、マウスの腫瘍が増殖したという。

 これは抗菌物質である「トリクロサン」の影響だ。トリクロサンにさらされたマウスは、それと接触しなかったマウスに比べ、より大きな肝腫瘍を患ったことがわかった。

 論文を発表した研究者らは、トリクロサンが「直接の発がん性物質ではない」と述べた――つまり、DNAを変化させないという意味だ――が、論文の著者の一人であるロバート・テューキー(Robert Tukey)氏(カリフォルニア大学サンディエゴ校の化学・生化学・薬理学教授)は、トリクロサンを「発がんプロモーター」と呼んだとABCニュースが伝えている。ちなみに「発がんプロモーター」とは、DNAが傷つけられた細胞の増殖制御システムを乱すなどし、がん細胞に変化させる物質のことだ。

 研究では、平均的な人間がさらされているよりもはるかに高い濃度のトリクロサンを6か月間、マウスに触れさせた。テューキー教授は「それが肝線維症につながったという結果には驚かされました」とザ・アトランティックに語った。しかし米食品医薬品局(FDA)は、動物での影響を示す研究結果が、ヒトでの反応を常に予測するものではないと指摘した。

 この研究結果は、トリクロサンが有害かもしれないという証拠を新たに増やした。 FDAは、健康にマイナスの影響を及ぼすとされる研究結果が出た化学物質の禁止を検討している。なお、ハンドソープのほか、歯磨き粉やボディソープなどにも使用されているトリクロサンを、すでに規制している国もある。

 トリクロサンは、現代のあらゆる製品に使用されている化学物質となっている。その結果、75%の人間の尿にトリクロサンが含まれ、97%の母乳にもその抗菌物質が含まれていると研究者らは指摘する。

 カリフォルニア大学デービス校のブルース・ハンモック(Bruce D. Hammock)教授は、「液体ハンドソープなど、トリクロサンが多量に含まれているものの効果の薄い商品での使用をなくすことで、人間と環境へのトリクロサンの暴露をほぼなくすことが出来るでしょう。その一方で、歯磨き粉など、トリクロサンの使用量が少なく健康上の価値があるとわかっているものについては、今のところ(トリクロサンの)使用を許可できると考えています」と発表している。