2010年8月12日 15時22分 更新
[コラム]幸福度と「持続可能性の指標」
出典:みずほ情報総研ホームページ(http://www.mizuho-ir.co.jp/)「コラム/みずほ情報総研(株) 環境・資源エネルギー部 吉田 雅哉 2010年6月22日付」より
「日本人の幸福度は、10点満点で6.5点」――内閣府は2010年4月27日、国民がどれだけ幸せと感じているかをアンケートに基づいて得点化した調査結果を公表した(国民生活選好度調査)。報道によると、欧州28カ国の同種調査の平均は6.9点(2008年)であった。
鳩山前首相は、所信表明演説において、経済合理性や経済成長率に偏った評価軸で社会を捉えるのを見直していくとし、「新成長戦略(基本方針)」(2009年12月30日)のなかでも、GDPなどの経済指標に代わる「国民の幸せの度合い」を示す新たな指標づくりを進めるとしていた。
国レベルの指標として、幸福をどのように評価していくことができるのだろうか。
マーブル・ハックの人間開発指数
「たったひとつでいい。ただ、GNPほど人間生活に無理解でない尺度が必要だ。」マーブル・ハックが開発した「人間開発指数(HDI:Human Development Index)」は、人間が健康的・創造的な人生を送るためには、健康側面(A long and healthy life)・教育側面(Knowledge)・経済側面(A decent standard of living)が重要であるとし、経済成長が国民生活にいかに還元され、反映されているかという点に評価の主眼が置かれている。
HDIは、国連開発計画(UNDP)の人間開発報告書(HDR:Human Development Report)のなかで1990年より毎年公表されている。我が国は1991年と1993年に世界一であったが、その後、長らく景気後退と不登校等による総就学率の低下によって、若干順位を下げている。最新の「人間開発報告書2009」(*1)によれば、2007年のHDIの1位はノルウェー、2位はオーストラリア、3位はアイスランド、我が国は10位。2006年のHDIと比べ、上位10カ国にはほとんど変動がなかった(世界経済危機の影響はまだ反映されていない)。
とかくランキングが注目される国際指標であるが、数値で見ると1位のノルウェーが「0.971」、10位の日本が「0.960」と、0.01ポイントのなかに10カ国がひしめいている。これらの常連上位国は、HDIが規定する基本的なハードルを以前からクリアしていたといえるだろう。一方、途上国の多くは着実に指数値を向上させており、中国(7位上昇)、コロンビア、ペルー(5位上昇)の昇順が大きかった。
HDIを改良した環境人間開発指数
世界銀行のWorld Development Indicators 2009(統計DB)を用いて、HDI構成指標の点数分布をみたところ、識字率・就学率といった教育側面の点数は、世界のいずれの国々も相当高くなりつつある。また、経済的側面である1人当たりGDPについても、上位国の多くが、必要十分(満点)である4万ドル(購買力平価、USドル)を既に超過しており、特に高所得国においては、教育側面、経済側面を構成する指標は役目を終えつつあり、構成指標の見直しが必要であるといえよう。
HDIの最大の特徴は、「人間の能力向上」(教育側面)をインデックスの中核に捉えていることである。絶対値のため継続点検でき、また、経済的側面と健康側面を含めたトリプルボトムラインにより、指標選択や統合に係るウェイト付の難問を回避できる構成を持っている。
こうしたHDIの長所を活かしつつ、当社では、環境省「平成22年版環境白書作成に係る基礎調査」(*2)において、世界銀行分類の高所得国(66カ国)であることを条件として、HDIの教育側面と経済側面の構成指標の見直しを行い「環境人間開発指数(HeDI:Human-environment Development Index)」として改良を行った。HeDIでは、経済的側面については、「1人当たりGDP」を炭素制約下のGDP向上を示す「CO2排出量当たりGDP」とし、教育的側面については、情報リテラシーの向上を示す指標として国際的に利用可能な「インターネット普及率」を採用した。
2007年のHeDIの試算を行うと、スウェーデンやスイス、日本などいわゆる環境先進国がHDIと比べてより上位となるランキングとなった。日本は、北欧諸国に続き6位となり、2007年のHDIに比べ4位の昇順となった。HeDIが、HDI上位の先進諸国においても、人間開発の新たな指数となり得る結果となった。
新成長戦略における幸福度と持続可能性の指標
菅新首相の新成長戦略(2010年6月18日)では、「社会・環境分野の課題解決と経済成長を一体的に推進し、国民の不幸を最小化」するとされ、2020年までに実現すべき成果目標として、幸福感の低い人の割合を減らす(幸福度平均6.5点を引き上げる)ことが掲げられた。
個人の主観による幸福感の平均ではなく、国の総体として観測される幸福度、持続可能性指標の開発が期待されている。
*1人間開発報告書2009(国連開発計画、UNDP)
http://www.undp.or.jp/hdr/global/2009/
*2環境省 「『平成22年版環境白書』作成に係る基礎調査」(2010年3月、みずほ情報総研)
図表1 HDIと改良HeDI
| 評価軸 | HDI | 改良HeDI | 改良の意図 |
| 経済的側面 | 1人当たりGDP | GDP/CO2 | 1人当たりのGDPが単に大きければ良いのではなく、炭素制約下を大前提としてGDPを高めなければならない。環境効率。炭素生産性。 |
| 健康的側面 | 誕生時点での平均余命 | 誕生時点での平均余命 | ― |
| 教育的側面 | 1成人識字率(2/3)と就学率(1/3) | インターネット普及率 | 「情報リテラシー」の向上を示す指標から、国際的に利用可能なインターネット普及率を採択した。 ・人間能力の効率向上のためのICT知識増大 ・環境情報力、環境コミュニケーション力の向上 ・高齢化社会の生産性向上の観点から |
(出所) みずほ情報総研作成
図表2 改良HeDI試算結果による国際ランキングの変化
(出所) HDI:国連開発計画「人間開発報告書2009」
HeDI:世界銀行 World Development Indicators 2009のデータを用いてみずほ情報総研算定











