2010年8月13日 12時07分 更新
米FRBのバランスシートに懸念高まる
米連邦準備理事会(FRB)は10日の連邦公開市場委員会(FOMC)において満期となった政府機関債(エージェンシー債)およびエージェンシーMBSの償還資金を米長期国債に再投資することを決定する措置を取ることで、FRBのバランスシートの規模を維持する方針を示した。

FRBは12日、11日時点のバランスシートの規模は2兆3,200億ドル(約197兆2,000億円)となり、前週の2兆3,090億ドルからやや増加したことを発表した。エージェンシー発行モーゲージ債(MBS)保有も1兆1,190億ドル(約95兆300億円)で、前週の1兆1,180億ドルからやや増加を示した。
FRBのバランスシートは5月に記録した過去最大の2兆3,340億ドル(約198兆3,900億円)に近い水準で推移している。
米FRBは満期償還資金を短期国債と組みかえる代わりにバランスシートを維持する政策を選んだ。これについて米ストーン&マッカーシーリサーチマネージングディレクターのレイ・ストーン氏は「米FRBの動きによって巨額に変動の大きい負債を抱えるようになり、将来的な利上げを難しくした。結果的にFRBは資金繰りに苦慮するようになり、利上げが困難になるだろう」と分析している。
現在FRBの満期償還資金と負債のバランスは不均衡な状態となっている。資産の一部である米FRBの保有する国債満期は平均で7年近くある。一方、負債の一部である過剰準備高への利払いを続けている状態であり、利上げが行われればより多く利払いを行う必要が生じてくる。
そのため今後数年間に利上げが行われれば、FRBの歳入の大部分は増減なく推移する一方、より多くの利払いをしなければならなくなる。
つまり、米FRBは将来的に利上げした際、米議会に資金を支援してもらわなければ、利上げによる高金利の利払いを賄う余裕がなくなる危険性を抱えている。
金融危機が生じる前は、米FRBは過剰準備高への利払いの必要がなかったが、金融危機後、米FRBは民間銀行に巨額の資金を融資し、その一部は過剰準備高となった。その額は現在1兆ドル(約85兆円)に及ぶ。過剰準備高が巨額となったため、米FRBは過剰準備高に応じて効果的に政策金利を調整することが不可能な状態に陥っている。
政策金利引き上げのためには、米FRBは過剰準備高への利払いをし続けなければならない。米ニューヨーク連銀は「過剰準備高への利払いなしには、米FRBは次第に政策金利をきわめてゼロに近いレベルに利下げする以外に余地はなくなるだろう」と述べている。
利上げに踏み切るには、米FRBは過剰準備高の額を大幅に削減するか、過剰準備高に対するさらなる高金利の利払いをし続ける必要がある。もし後者を選んだ場合、利払いのためさらなる資金を要するようになる。
その資金繰りについて、一部では米FRBが国債を購入し「ドル札を増刷する」ことで凌ぐのではないかとの憶測が出ているが、実際にそのようなことが行われれば、結果的に「量的緩和」となり利上げの目標に反する結果が生じることになる。
そのため米FRBは資金繰りのため米議会に資金援助を要求することも考えられる。しかしながら、米立法者は米連銀の議会からの独立を維持するためにこの様な案を受け入れないことが見込まれる。
このような米FRBや議会のシナリオを市場が察知し、米FRBが利上げを行う資金繰りに苦慮していることが伺われれば、「インフレ期待が高まるリスクが生じるだろう」とストーン氏は懸念を表明している。
ストーン氏は米連銀が満期償還資金を短期国債に再投資することを提案している。そうすれば米FRBのバランスシート上における高金利利払いのリスクを削減し、償還資金と負債への利払い額のバランスを取りやすくなるとしている。
現在米FRBは歳入が歳出を大きく上回る状態を維持している。保有資産から得る金利収入が過剰準備金のために支払う利払いを大きく上回っている状態が続いている。
しかし今後米FRBのバランスシートの規模を維持し続けることで、米FRBの資金繰りに対する懸念が高まりインフレ期待がインフレスパイラルを招くようであれば、米FRBは金融情勢に対応する形での利上げに踏み切るのが難しくなることが米市場関係者の間で懸念されている。
IBTimes












