2010年8月22日 01時04分 更新

ビジネス・スクールの教授が『もしドラ』を読んだら①-パフォーマンスを高めるマネジメントを考える

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 出典:SBI大学院大学(https://www.sbi-u.ac.jp/)「ビジネス・レポート第24号」より

 ベストセラーとなっている岩崎夏海著「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」(以下、「もしドラ」)を、SBI大学院の重田孝夫教授が読み、コメントを3回にわたり連載します。

 《第1回 パフォーマンスを高めるマネジメントを考える》

 「もしドラ」の主人公みなみが、自分自身に次のように言い聞かせるシーンがあります。

 結果を求めずに、プロセスを重視するのは、マネジメントとして真摯さにかける。

 しかし、結果を見ずに病魔に倒れた親友の夕紀を思うとすっきりしません。夕紀の貢献を素直に認め、感謝するためには、どうしたらよかったのでしょうか。

 <結果とパフォーマンス>

 目標は、言葉にした以上、成し遂げるための工夫と努力を惜しんではなりません。しかし、チャレンジングな目標の達成確率は5割を超えませんので、その達成を約束することはできません。

 「人事を尽くして天命を待つ」という言葉があります。やることを全てやり尽くしたとしても、結果は保証されません。

 その理由の第一は、自己管理できない外的要因の影響です。

 野球の試合の勝敗は、相手投手の出来に左右されます。清涼飲料の売上は、天候の影響を受けます。日本の経済成長率は、世界経済の動向に依存します。

 第二は、複数の部署や人間が目標に関与していることです。自分一人で完結する仕事は多くありません。社外からの納入部材への依存も見逃せません。

 第三は、努力が実を結ぶまでに時間がかかり、結実のタイミングがはっきりとわからないことでしょう。

 人事を尽くしたかどうかを結果で判断するのが適当でないのは明らかです。では、どうしたらよいのでしょうか。持てる力を上手く十分に発揮したかどうかをみるには、結果とは別の評価指標が必要です。当然、主観的に頑張ったかどうかでなく、客観的な事実で評価することが求められます。

 売上増加を図る際に、1)主要顧客への有効訪問件数を増やす、2)企画書の提出件数を増やす、といった営業課題がある場合には、それらを指標とし、それぞれの数値をどれだけ増加させたかをみることになります。英語では、それらの指標をパフォーマンス・インディケーターと呼びます。売上を伸ばすためのパフォーマンスをみる指標のことです。日本語では業績指標と訳されているため、誤って売上高を指標にとってしまう傾向がみられます。

 毎日夜遅くまで頑張って働いていたとしても、クレーム処理などに振り回されてしまい、有効訪問件数、企画書の提出件数ともに増加させることができなければ、営業課題は解消されず、パフォーマンスはよくなかったことになります。

 サッカーの試合では、選手が頑張って平均11キロ以上走り、走行距離で相手を圧倒したとしても、パス成功率で劣り、ペナルティー・エリア内からのシュートが少なければ、試合の内容=パフォーマンスがよかったとは言えません。

 <目標設定にイノベーションを!>

 チャレンジングかつ達成可能で、客観的な事実で達成度を測定できる意義のある具体的な目標を設定し、学び、考え、実践することで、自分に磨きをかけることができ、しかも、他人の判断ではなく客観的なファクトで目標が達成できたかどうかを確認できます。ドラッカーの重要な教えの一つです。

 でも、自分たちではコントロールできない外的要因に左右される結果目標の設定だけでは、天命に委ねる割合が大きく、パフォーマンスを把握できません。自分たちのパフォーマンスや上達の度合いを的確に把握する工夫が求められます。

 そこで、上位の結果目標に対して、自分の関与が大きく、自分のパフォーマンスをよく反映できる「上達目標・課題」を組み合わせて設定する方法を取り入れるアプローチがお薦めです。

 例えば、「もしドラ」のケースでは次のようになることでしょう。

 目標:2010年の夏の甲子園に出場する

 上達目標・課題1:投手の投球数比のストライク数を7割以上にする

 上達目標・課題2:出塁数比の盗塁、ヒットエンドラン数を4割以上にする

 これらの上達目標・課題をクリアするために、投手は、足腰を鍛えてコントロールをよくし、野手は、走力とグランダーを打つ技術を高めなければなりません。練習メニューを工夫し、明確な目標・課題を持って努力し、実力を高めることで、来シーズン以降の活躍も期待できるようになります。

 また、結果目標だけでは、達成できなかったときに評価が下がるのを危惧してチャレンジングな目標を設定しない人が少なくありません。特に、できなかったことで自分のプライドに傷つき、面子を失うと考えるタイプの人は、簡単な目標、やさしい目標を設定しがちです。それでは成長は図れません。

 それに対処するには、上達目標・課題を2つクリアしたら「よくできました」とし、さらに目標を達成したら「大変よくできました」と評価することにするのが上策です。

 それによって、目標のレベルは高く設定し、その達成のための上達課題にコミットメントすることが可能になります。

 目標設定方法にもイノベーションが求められます。

 そして、目標や課題をクリアするためにそれぞれの人が担った仕事でのパフォーマンスを個別に把握することで、個別のフィードバックが可能になり、優れたパフォーマンスを具体的に認知、感謝することが可能になります。

 SBI大学院大学教授 重田孝夫



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