ソーシャルビジネスの効果測定



15 October 2009 @ 10:58 am JST

出典:SBI大学院大学(https://www.sbi-u.ac.jp/)「ビジネス・レポート第十号 斎藤槙准教授」より

NYダウや日経平均株価がこのところ続落しています。

アメリカでは、オバマ大統領の政策の目玉であるグリーン・ニューディールが功を奏して景気回復に結びつくのを国民全員が期待している、その期待感がひしひしと感じられる今日この頃です。

ところで、景気が悪くなるとどんなビジネスも、投資効果の測定に関して今まで以上にシビアになってきます。

ソーシャルビジネスでももちろん同じことが言えます。

そんな中で、設立当初から効果測定という視点をしっかりもって運営しているソーシャルビジネスがあります。

One Acre Fund(ワンエーカー・ファンド)(http://www.oneacrefund.org/#)がそれです。

ソーシャルビジネスに関する名だたる賞を獲得しているので、ご存知の方も多いかと思いますが、ご紹介します。

●資本主義のもとでのソーシャルビジネス●

資本主義の原理では営利企業のモノサシは、利益率とリスクと言われています。

リスクを伴う投資行動の中で、どうリスクを最小にしながら、利益率を最大化するか、というのが課題です。

データや知見をもとに、投資をするかしないか、投資額をいくらにするかを決めていきます。

営利ビジネスの基本的考え方はここにあります。

実は当然のことながらソーシャルビジネスにも投資効果の考え方はあります。

SROI(Social Return on Investment)などと言われるものがそのひとつです。

今日ご紹介するOne Acre Fundは設立当初から独自の視点で効果の考え方を取り入れたNPOです。

●One Acre Fund●

まずは、沿革を簡単にご紹介します。

きっかけは、ケロッグ経営大学院(http://www.kellogg.northwestern.edu/)のAndrew Younがアフリカで経験したサマーインターンです。

彼が直面したのは、恒常的な貧困と飢餓という問題を抱えた東アフリカの農家の実態でした。

市場原理を導入し、救済ターゲットを特定し、そこに近代的な農業技術の提供と効果測定方法を取り入れることで、問題解決できるのではないかと考えたのです。

単に対処療法的な物資の援助でなく、技術やノウハウなどを教えることによって、最終的に自立できるシステムを構築するのが目的です。

そして、2006年にケニアにおいて、女性の自助グループを通じて38の農家支援をスタートしました。

●価値観●

ソーシャルビジネスにとって最も重要であるのは価値観です。

彼らの持つ価値観は以下に要約できます。

1. 単に物資などを援助しない。
2. 極貧からの脱却に、効果のある現実的なソリューションを提供する。
3. 夢を大きく持つ。
4. 寄付する人・団体と子供たちに対して100%の説明責任を果たす。

●具体的プログラム●

プログラム策定には市場原理を導入しています。

つまり、極貧農家の人たちを農家単位で個別に捉えるのではなく、彼らを束ねてグループにすることで、市場の中で存在感を持たせる原理です。

その取り組みを詳しくみていきましょう。

1.個別農家を束ねて大きなグループ化すること。これにより経済的な力を持たせる。

2.農家の人たちの教育。最新の農業技術を誰もが理解でき、実践できる方法に落とし込み、伝達・教育していく。

3.環境に優しい農業用具と肥料を使うこと。これまでの原始的なやり方で効率の極めて低かった方法にメスを入れる。

4.収穫とマーケットをリンクさせる。One Acre Fundがバルクで買い上げ仲介役を果たす。
それにより安定した供給を市場に対して約束し、高値で取引できるようにする。
これによって得た現金は新たな投資サイクルとして循環させる。

5.収穫高保険の設定。ノウハウや用具があっても天候に左右されるのが農業。
干ばつなどによって被害がでた際にもOne Acre Fundが間に入ることによって農家が受け取れる金額を保証する。

● 測定方法●

One Acre Fundは活動のモニターと効果測定のためだけに採用している7人のフルタイムスタッフがいます。

援助の対象となる農家の規模の把握、また、現状と目標数値の比較データを作成します。

内容としては、
1 規模という視点で、対象となる農家の作業人数の総数や対象地域の数。
2 インパクトという視点では、農家の収入の伸びの前年比と貧困と飢餓によって死亡する子供の数。
3 経済的持続可能性という視点では、農地の費用に対する収入の割合などです。

●この事例からの学び●

ソーシャルビジネスの作業プロセスは一般的に3つのステップで構成されます。

解決すべき問題発見のステップ(Challenge)、解決のための戦略構築のステップ(Strategy)、そして実行によってもたらされる効果のステップ(Impact)です。

活動をどの程度のエネルギーと費用をかけて行うのがベストであるかを決定するわけです。

営利企業に比べて、効果測定のステップ(Impact)がいまひとつのところが多かったNPOの中でこのOne Acre Fundの方法は秀逸です。

効果測定方法が明確で適正であれば、援助や投資を行う団体が増え、その結果また大きな効果が出るという良いサイクルが生まれてくるのです。

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著者プロフィール

斎藤槙(さいとう・まき) 米国LA在住
東京生まれ。1991年聖心女子大学卒業後、電通入社。1998年米国コロンビア大学国際関係大学院修士号取得。ASU International LLC代表取締役社長・社会責任コンサルタント。SBI大学院准教授、聖心女子大学非常勤講師。エコイスト。著者に『世界をよくする簡単な100の方法』(講談社)、『社会起業家』 (岩波新書)、『ソーシャルビジネス入門』(翻訳 日経BP)など。ソーシャル・ビジネス・ニュース(社会責任ビジネスで社会を良くし、楽しく儲けるがテーマ)をほぼ毎週発行しています。http://www.asuinternational.com/md/newsletter/

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