出典:SBI大学院大学(https://www.sbi-u.ac.jp/)「ビジネス・レポート第十一号 堂野達之講師」より
JAL(日本航空)の再建問題が世上を賑わせています。
政府は再生させる方針ですが、金融機関・労働組合・OBから、監督官庁、政治家まで
巻き込んで、誰がどこまで負担を負うべきなのかや、逼迫している資金繰りはどうするのか
という目前の問題など、解決すべき課題が山積しています。
ここでは,JAL再建問題を題材に、よく聞かれる「私的整理」「法的整理」という言葉の説明を
中心として、企業が過剰な債務をどのように処理するかについて取り上げたいと思います。
債務の整理とは、債務の支払を猶予してもらう(リスケジュール)ことに止まらず、
債務の一部を免除(カット)することを念頭に置きます。
債務整理には、「私的整理」と「法的整理」があります。
私的整理とは、裁判所を介在させない自主的な方法で、債権者の同意により
債務を免除するものです。
これに対し、法的整理とは、裁判所を介在させて、一部の債権者の反対があっても、
債権者の多数の同意によって、強制的に債務を免除する方法です。
私的整理に関しては、まず金融機関は原則として債務免除には応じません。
応じる場合でも、事業再生ADR、中小企業再生支援協議会、企業再生支援機構といった、
権威のある機関の関与により、きちんとした再建計画を立て、リストラを行い、
経営者も責任を取るといった手続を踏まなければなりません。
ハードルは高いです。
今回のJALは、現時点では、一旦は事業再生ADRを申請しながら、最終的には
企業再生支援機構の利用が予定されています。
(同機構は、金融機関から債権を買い取ったり、投融資機能がある点に独自性があります)
このような手続を踏むことができない場合には、第二会社を設立して事業を譲渡して、
抜け殻になった会社を清算したり(この第二会社方式は,上記の手続でも利用されています)、
金融機関が債権を第三者(サービサー)に譲渡して,債務者がサービサーに譲渡代金+alpha;を
払って残りは免除を受けるという方法もあります。
私的整理のメリットというのは、法的整理だと取引先の債権もまとめてカットの対象となり、
信用が毀損される可能性があるが、私的整理だと金融機関の債権だけを対象として、
取引先の債権を保護できるという点です。
JALでは、法的整理という声もありながら、政府が慎重なのは、私的整理のこのようなメリットが
あるからではないかと推測されます。
他方、法的整理には、大きく分けて、会社更生(経営陣は原則退陣する)と
民事再生(経営陣は続投できる)があります。
JALは巨大企業ですし、経営者責任を問わなければならないので、法的整理となれば
会社更生の可能性が高いと思われますが、中小企業では経営者の続投のために、
民事再生を選択したいというニーズはあるでしょう。
しかし、実際は、債権者の理解が得られないということで、民事再生でも経営陣が退陣する
ことが結構見受けられます。
法的整理は、手続に透明性があること、一部の反対債権者の意思によらずに債務免除できる
点でメリットがあるでしょう。
JALの場合は、巨額の年金債務の問題があり、法的整理によればカットしやすいという
議論があります。
私的整理にせよ、法的整理にせよ、事業自体に利益を生み出す力があることが、
債務免除の必要条件となります。
JALは今期も巨額の赤字を計上する見込みと報道されており、利益を生み出せるように
根本的な経営体質からメスを入れることが不可欠です。
どのような方式を採るにせよ、そこが最大のポイントでしょう。
JALのような巨大企業(しかも国策会社)はともかく、一般の中小企業が金融機関から
債務免除を受けることは容易ではありません。
中小企業としては、カットを必要とするような過剰な債務を負わないように、
日々努力と工夫をすると共に、いざというときに備えて企業再建に明るい弁護士、会計士、
税理に経営状況を適宜チェックしてもらうのがよいでしょう。

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