2010年、クラウドはさらに進化する



15 December 2009 @ 11:54 am JST

出典:みずほ情報総研ホームページ(http://www.mizuho-ir.co.jp/)「コラム/みずほ情報総研(株) ビジネスコンサルティング部 吉川 日出行 浜田 道昭 2009年12月15日付」より

 2009年、IT業界は全般的に強い逆風下にあった。米国発の金融危機に端を発した不況が長引いて民間企業のIT投資が大きく抑制され、さらには年の後半で起きた政権交代によって官公庁等の予算が一部凍結されるなど、IT業界にとっては大変厳しい一年であった。

 業界全体が冷え込んだがために、今年はこれといったキーワードもあまり出てこなかった印象だが、そのなかで注目され、マスコミもこぞって取り上げているのが「クラウド・コンピューティング」だ。

■「クラウド」がもたらしたもの

 クラウド・コンピューティングという言葉の定義は、いまだに曖昧で確立されていないが、おおむね以下のような形で定義できる。「ITリソースやサービスを、利用者自らが所有するのではなくネットワークを通じて外部から得る(あるいは利用者に提供する)コンピューティングモデル。このITリソースやサービスは、利用者が必要なときに必要なだけ使えるよう、拡張性と柔軟性をもって提供される。」

 クラウド・コンピューティングは、以前から存在した「ネットワーク・コンピューティング」「ユーティリティ・コンピューティング」「ASP」「SaaS」「仮想化」「ブレード」「グリッド」などを言い替えたもの、あるいはこれらの要素の複合体だとも言われる。複合体で定義が曖昧ならば、それを形作る個々の要素に注目すべきだろう。

 クラウドを構成する「ネットワーク・コンピューティング」や「ユーティリティ・コンピューティング」というキーワードは、急速に発達するネットワーク技術を前にこれらをどうやれば活用できるかという発想から、個々人がいつでもどこでもITリソースを使える社会というものが提唱されるなかで使われ始めた。いまや、こうした高度ネットワークは、欲しいと思えば契約するだけですぐに利用できるようになった。

 その結果として、初期の個人単位での「いつでもどこでも」から、現在では組織として「必要なときに(社員の)誰でも」へと変わった。「仮想化」や「ブレード」についても同様だ。これまで培われてきたITリソースの効率的かつ大規模な実装技術は、もはやコモディティ化して、どんな組織でも欲しいと思えばすぐに実装できる。クラウド・コンピューティングの登場の背景には、こうした技術の成熟化と一般化が隠れている。

 また、クラウド・コンピューティングを構成するもう一方の要素「SaaS」「ASP」の普及は、利用者の意識も大きく変えた。ソフトウェアをサービスのように使うというこの考え方は、「所有から利用へ」というわかりやすい掛け声とともに、ちょうど不況期で投資予算や運用コストを削減したいと思っていた経営者に瞬く間に浸透していった。既に多くの企業が、一部の業務を「SaaS」か「ASP」に切り替えている。日経マーケットアクセスが2009年8月に実施した「SaaS/ASP利用実態調査」によると、その普及率は20%に達したそうだ。

■クラウド・コンピューティング三態

 企業におけるクラウド・コンピューティングの実装形態は、実はもう少し細かく分けられる。一般に公開されている「パブリッククラウド」の活用、自社向け「プライベートクラウド」の構築、そして企業グループで基盤を共通化する「グループクラウド」への移行だ。

 企業のコア・コンピタンスに直結する受発注や生産管理、物流統制などのシステムを、他の企業と共通のプラットフォームを使うパブリッククラウドに切り替えて他社と標準化・共通化してしまうことは、競争優位を失う自殺的行為に繋がりかねない。こうした企業競争力の源泉であるコア・コンピタンスの部分は手元において、常にノウハウを埋め込むとともに、臨機応変に変更していくことが必要だ。自社内に閉じたクラウド化、すなわちプライベートクラウドで対応したほうが良い。

 ちなみに、プライベートクラウドについてあまり大げさに考える必要は無い。従来のサーバをリプレースする際に、都度、最新の拡張性と柔軟性を持ったアーキテクチャーへ粛々と変えていけばよい。そもそも、日本の大企業の多くは昔から、自社のITリソースを情報子会社にアウトソーシングしてきた。いまさらクラウドというキーワードに大上段に構えずとも、先ほど述べた「仮想化」や「ブレード」といった個別要素を活用して、情報処理子会社内の運用業務の効率化やシステムの拡張性や柔軟性の向上に取り組んでいけばよい。

 コア・コンピタンス以外の、業態に関わらず共通性の高いインフラに当たるメッセージ伝達や文書蓄積、顧客管理などは、今後はパブリッククラウドの活用でコスト削減効果やスケールメリットを享受していくのが主流になる。もし、運用を完全に外部に任せてしまうパブリッククラウドではセキュリティやBCP面で不安があるのであれば、プライベートクラウドの企業グループ版であるグループクラウドを検討してみるとよい。昨今はM&Aも盛んで、企業規模はどんどん大きくなっている。総務・人事をはじめとした間接業務やノウハウ管理など、企業グループ内の共通基盤的な部分を集約・統合してクラウド・コンピューティングで提供し、従前言われてきた「シェアードサービス」を具現化する時期としては最適だ。グループクラウドの採用企業はまだ多くは無いが、2010年以降には大企業を中心に採用企業が増えるものと思われる。

 なお、クラウド関連技術を使ってシステムを集約・統合する際の留意点をひとつ挙げるとすれば、それはサービスレベルの違うシステムを一緒に統合しないことだ。クラウド化によってサーバや筐体は集約され、運用監視は統一的に行われる。その際にレベルの違うシステムを一緒にしてしまうと、より高度な管理を必要とするシステムにサービス水準を揃えることとなり、コスト増となることがある。何をどのようにクラウド化するかは、コンサルタントなどとよく相談して決めるべきだ。

■情報処理業界に訪れるパラダイムシフト
 
 さて、「SaaS」に代表されるようなITリソースのサービス化への動きは、今までSIerと呼ばれていた中間委託事業者のビジネスモデルにも大きな影響をもたらしている。サービス提供者と利用者が直接繋がるなかで、中間委託事業者としてどんな付加価値を生み出すのか。付加価値が生み出せないのであれば、サービス提供者へ替わるかサービスを運ぶ役割のキャリアに乗り出すか、あるいは市場から退場するしかなくなる。情報処理業界にも、早晩にパラダイムシフトが起きるだろう。

 駆動燃料がガソリンから電気へとシフトしつつある自動車業界や、ソーシャルメディアの台頭が起き、広告収入に頼るビジネスモデルが曲がり角を迎えているメディア業界と同様、クラウド・コンピューティングの浸透により、これまで比較的無風で過ごしてきた情報処理業界周辺にも2010年以降には大きな変化が起きそうである。そして恐竜のように環境変化に対応できないモノは滅びるだろう。

みずほ情報総研

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Comments
1.
Sep 8, 2010 3:28am

sss
2.
Nov 26, 2010 5:56am

sa
3.
Dec 6, 2010 8:32am

test
4.
Dec 6, 2010 8:42am

test

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